高精細なネイルアートを、自宅で気軽に楽しめるネイルプリンター
「ネイル市場の開拓」を担うネイルプリンター「PriNail」誕生の背景に迫ります。
生活家電メーカーである小泉成器が得意とする分野の一つが、ヘアケアやエステ関連商品に代表される理美容器具の分野だ。すでにヘアドライヤー、美顔器などで一定の売上とシェアを持つ小泉成器。新たな市場の開拓を模索していたタイミングで、パートナー企業から「小泉成器が持つ理美容器具の開発・販売ノウハウを活かして、ネイルアート用の小型プリンターを商品化できないか?」という提案が持ち込まれた。
社内での調査・検討の段階で、ネイルサロンから自分自身で楽しむセルフネイルまでを含めると、ネイル市場にはヘアケア市場の3分の1程度の規模が見込めるという結果が出た。さらに、ネイル関連の家電といえば、まだまだ「爪研磨機(爪やすり)」程度のもの。「新たな市場を開拓できる可能性を感じましたし、やってみよう!と気合いが入りました」(商品事業部・プロジェクトリーダー・植村)「世の中の女性の『もっと簡単にネイルを楽しみたい』という声に応えられれば、ヒット商品になるかも…という期待がありました」(商品事業部・高橋)こうして2017年12月、ネイルプリンターの商品化プロジェクトが動き出した。
ネイルサロンを利用する場合、1回あたり5千円~1万円程度の費用と、2時間程度の時間が必要となる。また、一度ネイルサロンを利用すれば、2週間~1ヶ月程度はネイルを維持したいところ。自分自身で施術する「セルフネイル」を楽しむ女性が増えているが、それでも学生や飲食店、医療従事者などについては、週末や休日にネイルを楽しみ、休み明けにはネイルを元に戻す必要があるだろう。「様々なユーザー像、シチュエーションを検討し、誰もが気軽に、簡単に、本格的なネイルを楽しめるように、ランニングコストと使い勝手の良さに徹底的にこだわりました。その結果、施術1回あたり150円(両手指への施術)、スマホアプリによる簡単操作、指1本あたりのプリント時間は約10秒での商品化を実現させることに成功しました」(植村)。
もともと、パートナー企業からネイルプリンターの商品化が提案された時点で、試作機の性能としては、十分に商品化できるレベルにあった。「試作機を目の前にして、『面白い!』と感動に近い感情を抱きました。また、私たち女性社員は、商談や調理器具の実演などもあり、施したネイルを長く楽しめないので、『欲しい!』とも思いました。一方で『このままで売れるかな?』という疑問もありました」(商品事業部・武田)そこで、プロジェクトメンバーとパートナー企業の技術者との間で、操作性、デザイン性、使用感などの細部を突き詰める作業が繰り返されることになった。
商品化を目指した細部の見直しについては、指を出し入する部分の形状、付属する部品の収納方法、本体のカラーやデザインなど多岐にわたった。「女性目線で色々な部分の改良をお願いしましたが、男性技術者の皆さんが上手くカタチにしてくれて。私たちはこの商品に携わることができて、本当に楽しかったです」(武田)
細部の改良と同時に、「使う楽しさ」をアップさせるための取り組みも並行して行われた。ネイルプリンターそのものの使い方は、電源を入れ、指を差し込むだけ。「使う楽しさ」につながるネイルのデザイン選択や編集・加工、プリント位置の確認といった操作は、スマートフォンのアプリで行う。そこで、アプリに「使う楽しさ」を持たせた。「アプリの開発は当社で行いましたが、シンプルでわかりやすいものだったので、とくにデザインに重点を置きました。オシャレに関わるアイテムである以上、『気持ちが上がる』ことが大切なポイントになります」(高橋)
人間の手ではとても実現できない、高精細なプリントが可能であることが、新しいネイルプリンターの特長。300種類以上のデザインのほか自分で撮影した写真なども、色鮮やかに、緻密にプリントできる。その実力を発揮させ、より美しいネイルアートを楽しんでもらうために、高橋と武田の二人はベースカラーとなる白いマニキュア、ネイル表面を保護するトップコートの最適な組み合わせを探った。「店頭やネットなどで市販されている、あらゆるマニキュア、トップコートを入手し、可能な限りテストを繰り返しました。発色と耐久性の両面でベストな組み合わせを、店頭で体験してくださるお客様、デモやセールスを担当する社員にお伝えし、この商品の魅力を最大限にご理解いただけるように努めました」(高橋)
パートナー企業からの提案を受け、プロジェクトがスタートしてから約1年後の2018年11月、期待のネイルプリンターがついに新商品として発表された。商品名は「PriNail(プリネイル)」。ほぼ“未開の地”ともいえるネイル市場に投入される商品ということもあり、女性タレントを招いての大規模な発表会を開催。登壇した社長の田中は、3人の孫の写真を自身の爪にプリントするほどの気合いのいれようだった。
「PriNail」の発売は翌月の12月1日から。武田は国内最大級の家電量販店の店頭で、デモンストレーションを担当した。発表会の報道、人気テレビ番組での紹介、SNSによるクチコミの拡散などもあり、会場には十代の女性から年配のご婦人まで、連日、数百人にものぼる女性が集まった。「実際に体験してくださった方のほとんどが、プリントのクオリティーの高さに驚いていました。そして、皆さん嬉しそうにされていて。もちろん『PriNail』のことを知り、興味を持ってくださったのでスタートの手応えはあります」(武田)
「通常のプリンターの場合、プリントの速さ・美しさ・コストなど『機械としての性能』でのアピールが最優先になりますが、『PriNail』の場合、ネイルの楽しさ・キレイになる喜び・使い方の発見といった『PriNailでしかできない体験』を積極的にアピールしていきたいです」(高橋)
発表・発売から日が浅い「PriNail」だが、家電量販店をはじめ、各方面からの問い合わせが増えており、現段階では販売台数も計画通りに推移している。「もうすでに、『足の爪を飾るペディキュアはできないのか?』といった問い合わせまでいただいています(笑)また、女性が持つ『いつまでも美しく』を実現するきっかけにと、高齢者をターゲットにしたいという量販店様もあり、まだ見ぬ可能性が広がります」(植村)
Member
商品事業部植村 正勝
商品事業部高橋 沙絵
商品事業部武田 爽奈
コイズミのビューティ製品